1.概要
日本に旅行するであろうユーザーにアプローチする方法として、1つ目は訪日旅行者の情報源の上位であるSNS内のデータを活用すること、2つ目に現地メディアから自社サイトへ誘導することによってユーザーの人物像を把握する方法があります。
2.訪日旅行者の導線
訪日インバウンド対策の考え方として「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のように旅行者の行動フェーズに分けて、情報発信のアプローチを変えるということは王道になってきていると思います。さらに分割すると「旅マエ」でも旅行誌やネット動画などで興味を持ってから予約するまでの段階もあるでしょうし、「旅ナカ」では旅マエでの情報に加えて現地で触れるフリーペーパーやクーポン情報を参考にしながら、観光・買い物・食を楽しむという旅行客もいるでしょう。当然、旅のスタイルは人それぞれで、日本人が知らないような地方の観光地へ訪問する人もいますし、東京・京都・大阪のような大都市での観光が好きな人もいると思います。
図1:訪日旅行者の行動導線の例
当然、調べている段階で情報を届けたいと思うのが自然かと思いますが、国によってメディアなどの違いもあり旅行の情報源は異なっているようです。特に訪日旅行客の多い中国・韓国・台湾・香港に着目したものが以下になります。
3.旅行で役に立った情報源
図2:訪日旅行で役立った旅行情報源(中国)
観光庁の消費動向調査によると、中国の訪日旅行者の場合、旅マエの段階でSNSから情報を得ることが1位となっています。中国のSNSでよく使われているものといえば、Wechat、Weiboなどが挙げられ、動画ではYouku(ヨークー)、Tencent(テンセント)、IQIYI(アイチーイー)などがあります(※)。
旅ナカではサイト別ではありませんが、スマートフォンから情報を得ている人が大半になっています。自国でポケットWiFiをレンタルする場合やHandyのようなホテルの部屋に設置されている端末を見かけることも多くなりました。
図3:訪日旅行で役立った旅行情報源(香港)
香港の訪日旅行者は旅マエの段階では、個人ブログが1位に来ています。JNTOのホームページ、旅行専門誌に続いて4位にSNSがきています。香港では中国と異なりFacebook、Instagram、YouTubeといったグローバルなサービスがよく使われています。それに次いでDiscuss.comのような地元メディアが利用されています(※)。旅ナカではやはりスマートフォンから情報を得ている人が大半となっています。
図4 訪日旅行で役立った旅行情報源(台湾)
台湾の訪日旅行者では香港と同様に個人ブログが1位になっています。ブログサイトではPIXNET(ピックスネット)のような日本ではなじみのないサイトがFacebookとそれ以上に利用されている傾向があります。SNSは日本政府観光局(以下、JNTO)サイト、旅行会社ホームページ、旅行専門誌に続いて5位にあがっています。コミュニケーションツールとしてはLINEやFacebookメッセンジャーが多く使われています(※)。旅ナカでは中国や香港と同様にスマートフォンが旅の情報源になっている傾向が伺えます。
図5:訪日旅行で役立った旅行情報源(韓国)
韓国では1位が個人のブログ、2位がSNSとなっており、注目すべき点としては検索やブログなど情報ポータルとしてNAVERの利用が多いのが韓国の特徴と言えるかもしれません。FacebookやYouTubeも多く、コミュニケーションツールとしてはカカオトークやLINEが多いようです(※)。
各国のメディア利用状況は異なりますが、個人ブログ、各種SNS、JNTOホームページなどは共通して旅行の情報源となっていると言えそうです。
4.訪日旅行者へのアプローチ最適化フロー
上記のような各国の状況が大まかに把握できたところで情報発信のアプローチについて考えます。各国の言語別にSNS公式アカウント(FacebookやWechatなど)で発信し続けているだけではもったいないかもしれません。個人ブログや地元メディアにアプローチできていないのも機会損失でしょう。
しかし闇雲に情報発信やプロモーションを行なってもリソースや予算に限界があります。ですので「必要な人だけに必要な量だけ情報を発信していく」必要があります。そういう意味では広告なども利用してある程度、意図的な情報コントロールを行う必要があります。
そしてその「情報を届けるべき人」「旅行してくれそうな人」というユーザーを事前に判別するにはデータを蓄積しておかなければなりません。
・自社メディアであれば、タグ設置などによるユーザーデータ蓄積
・SNSメディアであれば、SNS内でのデータ蓄積
・他社メディア(地元アプリやブログなど)であれば、広告による自社メディアへの誘導
実施フローとして以下のように
STEP1:ユーザーデータの収集・蓄積
STEP2:適切なターゲットの作成
STEP3:STEP2で作成したターゲットへのアプローチ
の順をたどることできれば理想的でしょう。
図6:メディアの最適化フロー例
SNSの投稿から自社サイトへ誘導できる場合は自社でデータが取得できますが、投稿をクリックしないユーザーはSNS内のプラットフォームでのアクション(いいねやシェアなど)を有効活用しない手はありません。まずは投稿を見るだけの何もアクションを起こさないユーザーとアクションを起こすユーザーを区別することで優良ユーザーセグメントを作成可能です。しかしこの優良ユーザーは既に公式アカウントのフォロワーである可能性が高いためいつも情報を届けているユーザーである恐れがあります。ですので、目的によってはさらにこの優良ユーザーを拡張することでフォロワーではない新規の優良ユーザーへアプローチする方法が適しているでしょう。
図7:2種類のターゲット作成
図8:SNS内の優良ユーザーの例
一方、特定のSNSプラットフォームではなく、地元メディア・アプリ・ブログサイトのような現地メディアに一括してアプローチしたい場合は、弊社Vponのような配信ネットワークでおおむねカバーできます。そしてそこから得られるデータによって、さらに詳細なターゲット像が見えてきます。(例として、どのような年齢で、何に興味があり、どのようなアプリを利用しているか、日本にどの程度旅行しているか、どの時間帯にネットにアクセスしているか、どこに住んでいるかなど)
5.まとめ
各国により、訪日旅行のための情報源は異なっています。中国はFacebookやGoogleが利用できないため独自のSNSや動画サイトが利用されています。台湾や香港では、Facebookなどもよく利用されているものの地元メディアやブログなども多く閲覧されています。
日本に旅行してくれるであろうユーザーに効率よくアプローチするためには、ユーザーデータから判断していく必要があります。1つ目にSNSの場合であれば、SNSのプラットフォームの中で優良ユーザーを作成し、拡張して新規ユーザーにアプローチできます。2つ目に、地元メディア・アプリ・ブログのようなサイトにアプローチする際はVponの配信ネットワークなどを活用して訪日旅行の可能性が高いユーザーを見定めることが重要となります。
※Hootsuite発行「DIGITAL IN 2018 EASTERN ASIA ESSENTIAL INSIGHTS INTO INTERNET, SOCIAL MEDIA, MOBILE, AND ECOMMERCE USE ACROSS THE REGION」からALEXA’S RANKING,MOST ACTIVE SOCIAL MEDIA PLATFORMS,TOP APP RANKINGSを参照