Vponビッグデータインバウンドセミナー熊本レポート

12月5日(木)に熊本県熊本市にある熊本城ホールにて行いました「Vponビッグデータインバウンドセミナー熊本」

2019年最後のVponセミナーはアジアからの訪日旅行者から注目を集めている熊本で締めくくりました。

今回はそんな熊本セミナーをレポートとしてお送りします。

■JNTOのデジタルマーケティング施策について

セミナーではゲスト登壇として日本政府観光局(JNTO)企画総室 デジタルマーケティング室 シニア・アシスタント・マネージャーの中村大介氏をお迎えし、JNTOのデジタルマーケティング施策についてお話しいただきました。
熊本セミナーレポート

日本政府観光局 企画総室 デジタルマーケティング室 シニア・アシスタント・マネージャー 中村 大介氏

JNTOでは2017年からデジタルマーケティング室が発足して以来、デジタルマーケティングを活用した情報発信やデータを活用したプロモーションを実施しています。
同室ではJNTOが保有するウェブサイト、SNS、スマホアプリ等で情報発信をしながらバックヤードでデータを収集し、サイトやアプリの利用者の属性やコンテンツの反応などを分析しています。さらに、スマートフォン向けのアプリを通じて訪日旅行者に対して旅ナカの情報や災害発生時の情報を行うとともに、アプリから取得した位置情報を活用して動向把握や日本の各地域へのコンサルティングを行っています。
中村氏は訪日旅行者の位置情報を把握することの大切さについて「今まで見えなかったものを位置情報などを通じて訪日外国人の動くを把握できることは非常に大事」と語りました。

DMPを活用したデジタルマーケティング戦略

JNTOでは同局の内部データと外部のビッグデータを組み合わせてDMPを構築してマーケティングに活用しています。それらのデータは同局内のプロモーションのほかに、自治体・DMO等が行うプロモーションの使用に活用されています。
JNTO自らが行うマーケティング活用事例として以下があります。
(1)Google Analyticsから得た分析結果をダッシュボードとして提供
(2)デジタル広告の実施

(2)では実際のキャンペーンページを使った実証実験が行われました。実験ではキャンペーンサイトをデジタル広告で配信し、さらにサイト閲覧後の航空券やホテルの予約関連行動の有無を測定するツールを導入して、JNTOのデータを活用していない広告と活用した広告とで効果を比較しました。その結果、ウェブサイトへの誘引数では一般的なデジタル広告の方が多かったものの、JNTOデータを活用した広告の方がサイト訪問後に航空券やホテルの検索や予約を行う数が多いことがわかりました。

デジタルマーケティング施策の高度化に向けた動き

自治体・DMOや民間企業が訪日プロモーションを行うにあたって、中村氏は訪日旅行者を「無関心層」「日本関心層」「訪日検討層」「訪日層」に区分したうえで、「海外プロモーションを行うときに何をするかを考えると、たくさん選択肢が出てきてしまい相当悩ましくなると思いますが、どこがゴールなのかを重視しることが大事だと思います。もちろんどこにターゲットを絞ることも大事ですが、まずはそこから逆算してどういったことをすればいいのかを考える必要があると思います。」と語りました。
また、中村氏はデータドリブンな訪日プロモーションを推進する中で、デジタルマーケティング室を「システム部門に近いような全体を見る間接部門」と述べました。
その理由として同室では事業者との打ち合わせにも同行し、さらに初めてデジタルに触れる担当者に向けてアドバイスを行うなどの活動も進めていることを挙げました。最後に中村氏は「デジタルマーケティングってすごく難しいなと思っていまして日々悩みながらやっています。ただ、今持っているサイトやSNSなどの手段やデータが見えるツールなど、まずは手が出せるところから活用していって、今できていないところはどこなのかをはっきりさせてから全体に反映させることが非常に重要かなと思います。」と語りました。

■意外に知らないインバウンド事情

〜効果的な旅マエ訴求でアジアからのリピーターを増やすには〜

続いてはVpon JAPANマーケティング推進室室長の有田元則より日本のインバウンド事情とさらなるアジアからの訪日旅行者呼び込みのために対策についてお話をさせて頂きました。

Vpon有田

Vpon JAPAN株式会社 マーケティング推進室 室長 有田 元則

観光市場から現状を読み解く

下図の訪日旅行者数によると、2018年には3100万人以上の旅行者が日本を来訪しました。そして、日本では2020年には4000万人、2030年には6000万人の訪日旅行者数を目指しています。
旅行者数を国別で見てみると、中国、韓国、台湾、香港、アメリカの順に訪日旅行者が多い状況となっています。しかし、世界的に見ると来訪数はまだまだ少なく、対GDP比で見た観光収入は0.8%と世界的に見ても低い状況となっています。

これらのことから日本のインバウンド市場は成長中であり、十分伸び代があることがわかります。

ロンドンオリンピック時のクラウディングアウト

参照:観光庁「平成25年度 観光の状況」 第2部 観光とオリンピック・パラリンピック

日本ではオリンピックを控えていることもあり、2020年の訪日旅行者数4000万人を目指していますが、例年のオリンピックシーズンのインバウンド状況はどのようになっているのでしょうか。実際に2012年に開催されたロンドンオリンピックを例に見てみます。

上図はロンドンオリンピックが開催された2012年の訪英旅行者数を前年同月比で表した推移です。

2012年の第三四半期の訪英旅行者数が大幅に落ち込んでいます。これはオリンピック観戦客がロンドンに集中したことで街中は混雑やホテルの宿泊費が高騰し、観戦を目的としない旅行者がイギリス旅行を敬遠したことが要因にあります。
この現象をJNTOは「クラウディングアウト」と呼び、オリンピック年にはこのような現象が起こりやすくなります。そのため、政府としても対策の一つとして「地方分散」や「時期分散」ことをテーマに挙げています。

熊本県のインバウンド状況

熊本県訪日宿泊者数

参照:観光庁「宿泊統計データ」

上図は国別の熊本県の訪日宿泊者数です。熊本県を訪れる訪日宿泊者は韓国、台湾、香港、中国の順に多いことがわかります。
情勢の変化により、次に多い台湾、香港、中国に注目されている方も多いのではないでしょうか。
ということで、今回は熊本のインバウンド状況をVponデータから台湾、香港に絞って見ていきます。

下図はVponのデータから見た 台湾人と香港人旅行者のインサイトです。
熊本を訪れる台湾人旅行者は通信や健康、自動車、バイクに関心を持っているということがわかりました。
香港人ではIT機器、音楽や家電に関心があり、さらにエンタメ、テクノロジー、スポーツが好きな人が熊本に訪れる傾向にあるようです。
その一方で両地域ともコスメやショッピングに興味を持っている人はあまり熊本に訪れていないようです。
さらに、熊本に訪れた台湾人、香港人はどこに住んでいるのかを分析してみると、台湾では台北などの都市圏よりも新北市など郊外のベッドタウンから熊本を訪れる人が多いことがわかりました。
香港も同様に、通常は平均的に香港は九龍半島の中心部である油尖旺区からの訪日旅行者が多い傾向がありますが、熊本を訪れる香港人は新界と呼ばれる中心部から少し離れた郊外からやってくることが多いようです。

熊本の台湾人旅行者のインサイト
熊本の香港人旅行者のインサイト

旅マエ訴求でアジアからのリピーターを増やす

台湾や香港では旅行をするかどうかを決定する「プレ旅マエ」を経て、1.5ヶ月ほどで予約などを行います。そのため、台湾や香港にプロモーションを行う際には2〜3ヶ月前から行う必要があります。

さらに、訪日リピーターが多い台湾や香港では訪日回数が多いほど消費単価が高くなっていく傾向があるため、旅マエ訴求で訪日リピーターを増やすことにはメリットがあります。

よくあるインバウンド対策の失敗例
中華圏向けにインバウンド対策を行う上で忘れてはならいのは「訪日旅行者といっても十人十色である」ということです。
よくある失敗例として
(1)言語と訴求ターゲットが合っていない(例:中国人向けに英語や繁体字で訴求)
(2)訴求する商品と現地事情が合っていない(例:訴求したい商品が既に現地で販売されている)
(3)訴求内容と現地の理解度が合っていない(例:雪がない台湾に対してリフトについての十分な説明がない)ということが挙げられます。
勘や思い込みでこのようなミスマッチを起こさないためにはデータを活用してプロモーションを行うことが最適な手段のひとつとなります。

■インバウンド対策におけるデジタルプロモーション事例紹介

 〜北海道から沖縄まで〜

そして最後にVpon JAPANインバウンドデータ事業部シニアセールスマネージャーの吉備智子よりVponのデータを活用した観光団体様との事例について紹介をさせて頂きました。
Vpon吉備

Vpon JAPAN株式会社 インバウンドデータ事業部 シニアセールスマネージャー 吉備智子

事例3JNTO

JNTO様へは、JNTO様が保有する独自のDMPの中にデータの一要素として、Vponが保有するアジア旅行者のデータを提供をしています。そしてそのデータをもとにプロモーションに活用していただいています。

事例2大雪カムイミンタラDMO

大雪カムイミンタラDMO様は8つの市と町(旭川市、上川町、東川町、愛別町、比布町、東神楽町、鷹栖町、当麻町)をカバーする地域連携DMOです。

この地域の課題として厳冬期になると−20℃以下にもなる地域のため、旅行者は夏や春の来訪が多く、冬が少ないことが課題に挙げられます。

そのため、冬シーズンの誘客を行いたい。またウインタースポーツのスポットとしての認知獲得のためにプロモーションができないかということで、Vponから分析レポートを提供させていただきました。

主な分析としては基本分析と来訪台湾人、香港人分析、そして来訪中国人分析をさせていただきました。

事例3八幡平DMO

八幡平DMO様は岩手県八幡平市を管轄する地域DMOです。

八幡平市はちょうど岩手県と青森県と秋田県に境にあり、東北自動車道も通っているため、交通の便は決して悪いに地域ではありません。またスキー場や温泉など観光資産も豊富にある地域です。

その一方で、旅行者の来訪数は秋や冬に集中しており、春や夏に来る旅行者が少ないが、どういう人がこの地域に来ているのか、どうやってプロモーションをすればいいのかがわからないという課題があり、そこでVponの分析レポートを提供させていただきました。

主な分析として動向分析とペルソナ分析を行い、プロモーションに生かしていただいています。

事例4くまもと観光コンベンションビューロー

沖縄観光コンベンションビューロー様は離島を含めた沖縄県の観光分野を管轄する広域連携DMOです。

沖縄は台湾から距離が近いこともあり、年間約90万人もの台湾人旅行者が沖縄を訪れており、本島だけではなく離島にも来訪する台湾人旅行者多いようです。

しかし旅行者の多くは7月、8月に来訪することが多く、11月から2月は閑散期となっています。そのため年間を通して旅行者に来てもらこと、そして本島だけではなく離島へも誘客することが課題としてありました。

そこでVponから分析レポートを提供させていただき、分析レポートの結果から特定のターゲットに向けて広告の配信を行い、PDCAを回しながら誘客に繋げています。

事例5インアウトバウンド仙台松島

インアウトバウンド仙台・松島様は宮城県の仙台市と松島市を管轄する地域連携DMOです。

仙台は東北各地域への移動拠点として重要な地域となっていると同時に自然・温泉・祭り・スポーツ観戦など多くの観光資源を有しています。

その一方で、観光収益や訪日者数の継続的な増加には課題があり、今後それらを伸ばしていくための仕組み作りや、仙台・松島の6市3町全体での観光価値を高めていく必要がありました。そこでVponの保有するアジア旅行者データから、滞在分析、移動分析、属性分析を行いました。

事例6大阪観光局

大阪観光局様は大阪府を管轄する地域連携DMOです。

大阪観光局様は様々なサイトを持っており、さらにマーケティングの調査も行っていたりwi-fiのデータもあるため、様々なデータを持っています。しかし一方でそれらのデータが全く活用されていないという課題があります。また、来阪数を増やすこと、大阪での消費額増やすことも課題としてあります。

そこでVponではDMPを構築するとともにVponのデータの提供も行ない、データを可視化して日々の業務の中でデータを見ながらビジネスをしていくことを目標に動いています。

■最後に

初開催の熊本でしたが、予想よりも多くの方にお越しいただき、また興味深くお聞きくださり大変嬉しく思います。

熊本県は香港や台湾からの飛行機が定期便として就航しているため中華圏からの多くの旅行者が熊本に訪れています。実際に熊本県は中華圏の方にも人気があるんだなと実感しました。

今回のセミナーで熊本を訪れたとき、くまモンの写真を撮っている中華圏の方が本当に多いと実感しました。ですが、セミナーを通じてくまモンだけではない熊本の様々な魅力をプロモーションするためにヒントとしていただけたら嬉しいです。

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