2018年8月23日、Vpon JAPANは札幌にて「ビッグデータインバウンドワークショップ北海道」を開催しました。ゲスト登壇者として、北海道観光振興機構の上田昌司様より北海道のインバウンドの現状(交通、言語対応など)の観点からお話いただき、日本政府観光局(JNTO)の山本真弓様からはJNTOのグローバルサイトを中心としたデータ分析の観点からお話いただきました。
「北海道の観光客インサイト」
オープニングはVpon JAPAN代表取締役社長の篠原好孝より、Vponの保有する6000万人のアジア旅行者データから北海道を訪問するアジア旅行客の動向を語りました。
東アジア旅行者(中国・香港・韓国・台湾からの旅行者)の北海道におけるトレンドにおいて、冬時期の2月、12月は各国(2月は中国・香港・台湾、12月は中国・香港・韓国)から北海道に訪れる数が多い傾向です。スキーを始め冬のレジャーは人気ですが、一方で香港と台湾に関しては夏時期の7月もボリュームゾーンになっているのが印象的です。これについては通常の夏休みの旅行トレンドと推測できます。
北海道の滞在旅行客の一日のモバイル利用時間でみると、4カ国とも朝9時から15時までが多いですが、台湾人だけは夜間も多いことが特徴的です。
北海道滞在旅行客のスマートフォンアプリの利用傾向から見ると、中国人はやはりスマートフォン決済を求める傾向が強く、香港人は日本のライフスタイルに興味を示しています。韓国人は最も旅行関連や地域情報を調べる傾向があり、台湾人はこの4カ国の中で最も旅行関連の情報に触れる量が少なく逆にショッピングの情報を調べる傾向が強いというデータ結果になりました。広告への反応と合わせて見ると、台湾人は化粧品、飲食店、小売というジャンルに興味が表れていました。
「北海道インバウンドマーケティング」
Vponの旅行者ビッグデータから上記のような北海道の観光客インサイトが見えてきました。ところがそれを実際の集客施策に活用するにはどうすればいいでしょうか。
一例にはなりますが、「札幌に滞在している台湾人観光客にアプローチ」したいというニーズがあった場合、
・行動履歴から過去数日以内に台湾にいたユーザー
・デバイス情報から端末言語設定が繁体字のユーザー
・デバイス情報から夕方以降に集中配信
・位置情報から札幌市中心部周辺をターゲティング
・属性データから30〜40代の男女やファミリー層
上記のようなユーザーを掛け合わせたターゲットセグメントが作成できます。そしてそのターゲットに広告アプローチするだけでなく、オーディエンス拡張により「今後、札幌に訪問するであろう札幌旅行潜在層」にアプローチすることも可能です。
他にVponと日本政府観光局(JNTO)との取り組み事例では、Vponの旅行者データ(訪日潜在層データなど)を提供し、JNTOのオウンドメディアのユーザーデータ解析のためのダッシュボード提供などを行っています。
「北海道インバウンド課題と取り組み」
続いて登壇いただいたのは北海道観光振興機構の上田昌司様です。「北海道インバウンドの現状と具体的な取り組みについて」というテーマで北海道の課題やこれからの施策案について話していただきました。
北海道を訪問する海外旅行者数で見ると、中国、台湾、韓国が目立っており全国の傾向と大きくは変わりません。しかし推移で見ると、中国、台湾はもちろんですが、韓国人の増加率が際立っており格安航空会社の増便などの影響があるようです。
北海道の現状課題で見ると、「季節の偏り」「地域の偏り」があげられます。季節の偏りから見ますと、冬場(12月〜2月)に大きなピークがあります。「地域の偏り」の観点では道央と呼ばれる地域(札幌、小樽、ニセコ、富良野、美瑛など)が70%以上を占めます。次に道北、道南、道東と続きますが道央の一極集中は長年の課題となっています。
そのような偏りの課題に対して、海外旅行会社や海外メディアへのプロモーション(訪問や招聘)、国際旅行博覧会への出展、そして北海道に訪れている海外旅行者に直接情報を届けるというような再訪問促進事業があげられます。
そして、もう一つの大きな課題としては北海道内での二次交通があげられます。空港、駅、港と観光施設を結ぶバスの便が少ないという点です。そもそもバスは運賃の複雑さや停留所の分かりにくさもある上に、時刻表が読めないということや高速バスの電話予約も多言語対応されていないということが課題となっています。
それに対して、上記(発表スライドより)のように観光型周遊バスを運行することで解決できる側面があります。上記の図は昨年度の実証実験が行われた「ひがし北海道周遊バスルート」になります。北ルートは、札幌から層雲峡を経由して知床へ行くルート、南ルートは帯広から阿寒湖を経由して知床へ行くルートです。
「日本政府観光局が進めるデジタル施策ならびにデータ活用」
最後のセッションとして日本政府観光局(JNTO)の山本真弓様より「日本政府観光局(JNTO)が進めるデジタル施策ならびにデータ活用」のタイトルでお話いただきました。
2017年10月のデジタルマーケティング室の発足をはじめ、4言語対応(英語、繁体字、簡体字、韓国語)のスマートフォンアプリ「Japan Official Travel App」やInstagram本部アカウント(#visitjapanjp)による情報発信をこれまで以上に強化しています。そして情報発信だけでなくオウンドメディアから分かるデータ分析の重要性や分析結果の例についてもお話いただきました。
「さいごに」
札幌で開催されたVpon主催のビッグデータインバウンドワークショップ北海道ですが、札幌に拠点を構える株式会社ユナイト代表取締役亀井雄介様にも開催協力いただき、そして登壇者の北海道観光振興機構の上田昌司様、日本政府観光局(JNTO)の山本真弓様に御礼申し上げます。
■登壇ゲスト
北海道観光振興機構 次長 上田昌司様
日本政府観光局(JNTO)企画総室 デジタルマーケティング室 シニア・アシスタント・マネージャー山本真弓様
■協力会社
株式会社ユナイト
※当記事は2018年8月の情報をもとに構成しています。掲載内容、所属団体、部署名、役職名等は、セミナー開催時のものになります。