旅ナカ移動分析における4パターンの対策とは

旅ナカ移動分析

■ 線で動く旅ナカ旅行者

調査によると訪日旅行客の日本での平均宿泊箇所はアジア旅行客で平均3.0カ所(1カ所につき平均2.3日滞在)、欧米豪の旅行客で平均3.5カ所(1カ所につき3.1日滞在)となっています(※1)。当然、宿泊滞在だけでなく観光地から別の観光地や商業施設などへの移動となると多数の移動を繰り返していることが想像されます。

以下の図はイメージになりますが、単純に訪日旅行客数のボリュームが知りたい場合は、「点」で見ることで問題ありませんが、実際は複雑な「線」で動いているため、自分の地域や商業施設にはどのようなルートで流入してきて、次にどの街へ移動しているかが明確であるとより理想的な集客対策に繋げることができます。

旅ナカ移動分析

図 1:訪日旅行客の移動イメージ​

訪日旅行客は必ず空港や港から入国してきますので、空港周辺にいる段階で自地域や自社店舗の告知を図ることは常套手段と言えるでしょう。しかし、状況によっては対象が広すぎて希望するターゲットに効率的にアプローチできていないケースがあるかもしれません。空港近辺の街であればよいですが、空港や港からかなり離れた場所へ誘導したい場合は一工夫必要になります。以下の図2を参照すると、自地域にはその一つ前の近隣エリアがあり、また一つ後の近隣エリアに移動しているシンプルなモデルが表されています。特にこの一つ前にどこから訪問してきているかを知ることは非常に重要だと言えます。もし、空港から自地域に直行して、そこからまた空港に直帰する場合は、旅マエの段階で特定の目的で1カ所に訪問するプランを立てているのでしょうが、冒頭の調査によると平均的にそのような行動は珍しいと言えそうです。

旅ナカ移動分析

図 2:訪日旅行客の移動イメージ​

■ 一つ前の地域の重要性

自地域や店舗に誘導するという目的においては、どこから流入しているか(一つ前の近隣エリアがどこか)を知ることは集客対策に大変意味があります。特に「どの地域から訪日客が流入している割合が多いのか、来訪率が高いのか」という流入割合の観点と「多くの訪日客が滞在している近隣地域はどこか」というそもそものポテンシャルを知っておくというボリュームの観点が考えられます。

流入割合が高い場合は、訪日客にとって特定の周遊ルートが決まっていたり、交通の利便性であったり、ランドマークのようなものがあることが想定されます。そのような想像しやすい場合は良いのですが日本人にとっては想像つかない写真スポットを経由してくるケースでは想像では分からない場合があるかもしれません。いずれにしても、この流入割合は一つのヒントになります。

もう一つのボリュームの観点ですが、やはりいくら流入効率がよくても近隣エリアに訪日客が少ない場合は対策が変わってきますので、直前のエリアの訪日旅行者の数は大事なポイントとなります。

図 3:訪日旅行客が自地域へ流入するイメージ​

■ 東京都品川区の例​

以下の図4は、品川が自地域だとした場合の一つ前の流入元ランキングになります(※数値については一部イメージになります)。この場合ですと、距離が近いこともありますが港区からの流入割合が高くなっています。次に大田区、渋谷区と続きます。意外に新宿から品川のルートは下位となっています。まずは、このようにどの地域から流入しているのか、相性の良い街はどこなのかを定めることが最初のステップになります。

なお、こちらは台湾人に絞ったデータになりますが、対象となる国が定まっていなければ、そちらも検討が必要となるでしょう。

旅ナカ移動分析の例

図 4 :近隣地域から品川へ流入する様子

■ 旅ナカ移動分析における4つのパターン

このようにして「一つ前の近隣の来訪者ボリューム」と「一つ前の近隣からの来訪率(流入割合)」でまとめたものが以下の図5になります。

1:近隣の訪日者が多く、そこからの流入も多い状態

2:近隣の訪日者が多いが、そこからの流入は少ない状態

3:近隣の訪日者が少ないが、そこからの流入の割合は高い状態

4:近隣の訪日者が少なく、そこからの流入も少ない状態

移動分析4パターン

図 5:旅ナカにおける4つの対応パターン

1:近隣の訪日者が多く、そこからの流入も多い状態

この場合は大きな課題がないかもしれませんが、自地域や自店舗だけで集客対策をするよりも、近隣と共同でプロモーションを行うことでより効果の最大化が狙える可能性があります。自治体やDMOなどであれば何かしら連携を強化していくことは有効であると考えられます。

 

2:近隣の訪日者が多いが、そこからの流入は少ない状態

この場合は近隣からの誘導導線に問題がありそうです。あるいは近隣に訪日旅行者がいるわけですので、近隣周辺に向けて自地域や自店舗の訴求を行うことで流入割合は改善される可能性があると言えます。

 

3:近隣の訪日者が少ないが、そこからの流入の割合は高い状態

近隣のポテンシャルが低い場合は、旅ナカでのプロモーションの効果がなかなか出にくい可能性があります。そのため、旅マエの段階で周辺一帯の訴求を行っておくことで、流入割合自体は高い状態ですので、スムーズに自地域へと流れてくることも考えられます。

 

4:近隣の訪日者が少なく、そこからの流入も少ない状態

4番目の場合においては、近隣のボリュームおよび流入割合も共に低い場合ですので、問題となる場所の特定から始める必要があるでしょう。このまま旅ナカ集客を行っても非効率になる可能性がありますので注意が必要です。もし余力がある場合ですと、旅マエでの認知訴求と旅ナカでの誘導導線強化を同時に行うことで改善は十分に考えられます。

■さいごに

今回は線で動く旅ナカの旅行者に着目し、4パターンの対応分類をご紹介させて頂きました。特に、「2:近隣の訪日者が多いが、そこからの流入は少ない状態」「3:近隣の訪日者が少ないが、そこからの流入の割合は高い状態」については、分析結果と集客プロモーションをうまく活用することで成果の最大化が狙えるポイントとなります。

地方によっては旅行者のデータが少なかったり、距離が離れていることで明確な一つ前(IN)と一つ後(OUT)の近隣エリアが不明瞭になる場合もありますが、他にも様々な確度から分析することでまた新たな現状が見えてくることもあります。

このようにしてVponではアジアを中心とした旅行者データをもとに各自治体、インバウンド対策を行う企業の方々の支援を続けていきたいと思います。

 

 

※1:DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2019年度版)


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